東儀秀樹の雅楽

先日、雅楽師の東儀秀樹さんの講演を聴く機会がありました。雅楽といえば、正月に神社で何かかすれたような音で演奏されているものとしか認識していませんでしたが、今回の講演を聞いて、私の頭の中に日本の文化としてしっかりと認識したものと感じられました。

雅楽の歴史をくどくどと説明しても聴衆は眠くなるだけだということで、彼はその場その場で聴衆の年代等により講演方法を変えながら、雅楽の魅力を皆さんに伝えるようにしているということでした。例えば中高生を相手に講演するときは最初は雅楽の話なんか全く聞く気がないのが普通なので、例えば、先日、アイドル(嵐等)と共演しその人達が雅楽の楽器を使ってこんな音をだしていましたよというような講演の入り方をすると、中高生の目が輝き聴く気が前面に出てくるのがよくわかると言ってました。私もこの話を聞くまではよくわからない雅楽の歴史などを聞かされるものと考えていましたが、実際には全く違っていて、中高生等の一番興味を示さない集団にも聞く気を起こさせるような上手な講師であるということを感じさせられました。

雅楽は、中国、朝鮮から日本に伝来し、定着した世界最古のオーケストラと言えるものだということです。管楽器、弦楽器、打楽器と全て揃った楽団で、ヨーロッパで今のオーケストラができるより早い時代に既に完成していたということです。主に3つの管楽器があり、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)です。

笙 (和音) 三管
篳篥(主旋律)
龍笛(旋律)

この他に琴、太鼓等からなるオーケストラです。笙(しょう)はまるでパイプオルガンのような音色でしたが、歴史的にはこの楽器をもとにパイプオルガンやアコーディオンができてきたということです。また、篳篥(ひちりき)は一つの音階で抑揚をつけることができ人間の声に例えられる笛のようです。特にこの二つはそれぞれ単独で聴かしていただきましたが心に染み入る音でした。講演後半にはミニコンサートのようなこととなり、いろいろな曲を聴かせて頂きました。最初の演奏は浜辺の歌、仰げば尊し等の唱歌でしたが、日本の良さを感じさせるこのような唱歌は、文部省が歌詞が理解し難いからという単純な理由で教科書から外されているそうです。東儀さんは文部省の単純な考え方のみで子供達にこのような曲を聴かせていない教育に憤りを感じていました。私もそう思います。他にもボヘミアンラプディ等のクィーンの曲やジュピター等、自分の思考の中では今日まで雅楽とは全く繋がらないものを聴かして頂きました。

東儀さんはこの素晴らしい日本のオーケストラをもっと沢山の人に知って貰いたくて従来の雅楽の曲ではなく、唱歌やポップスの演奏を始めたそうですが、やはり周囲から反対や圧力が相当あったようです。もっと自由に活動するために約20年前に宮内庁を退職したそうですがやはりどんな集団にも圧力はありますよね。自分の所属する集団をより良い方向に進めたくてもなかなか難しですよね。私も管理職の時は色々活動しましたがなかなか上手くは行きませんでした。特に若い年代の人は、頑固な管理職が多い集団にいるより東儀さんのように外へ出た方が自由に活動出来るかも知れませんね。