静岡県で狂犬病が発生したニュースがありました。日本国内としては2008年以来の発生です。前回はフィリピンへ旅行に行った日本人がフィリピンで犬に噛まれ、帰国してからの発症でしたが、今回はフィリピンの人が犬に噛まれた後、日本に入国してから発症したものです。いずれの場合も日本の犬に噛まれたわけでは無いようです。日本国内の犬に噛まれて発症したとなると大変な事です。日本国内では狂犬病の予防注射を徹底して行っているので、確か私の記憶では1955年(昭和30年)以来、犬の発症はないはずです。でも、世界ではまだまだ犬の狂犬病がかなり流行しているようです。
狂犬病がなぜ恐ろしいかというと、狂犬病ウイルスを持った犬に噛まれて人に狂犬病ウイルスが感染すると最終的にウイルスが脳に侵入し、100%死亡するためと言われています。そのため、海外に長期滞在の予定がある場合は、前もって他の予防注射と一緒に狂犬病の予防注射も必ず摂取します。しかも、この予防注射は取り合えず3回摂取し、不幸にして噛まれてしまった後も2回、合計5回の予防接種が必要なようです。
私は獣医師で農家を巡回していて、訪問先で過去3回、放し飼いの犬に噛まれた経験があります。3回目に噛まれたときは、かなり深い感じがしたので家に帰ってから地元の病院へ行きましたが、傷口の軽い消毒を実施して、あとは抗生剤を処方されて終わりでした。傷口が深いかどうか確かめてもいないようなので、「先生、狂犬病は心配しなくてもいいのでしょうか?」と思わず聞いてしまったら、「多分大丈夫だと思うけど、犬の予防はあなたたち獣医師がやっているのではないの?」と言われてしまいました。「農家に放し飼いされている犬なんかにはお金掛けて予防注射なんかうってないよ」と思わず言いそうになって堪えていると、周囲の看護師さんたちのクスクスと言う笑い声が聞こえてきました。「この人、獣医さんなのに犬に噛まれたの?」みたいな心の声が聞こえたような気がしました。
「私は大動物の獣医なので犬は診療しないの!」と言いたかったけれど、じっと我慢するしかありませんでした。・・・