安楽死 ALS

ALS筋萎縮性側索硬化症で全身の筋肉がほぼ動かなくなった女性が、安楽死を求めそれに対応した医師二人が嘱託殺人罪で逮捕されたと言うことが話題になっています。この病気は徐々に筋肉が萎縮していって、最初は正常であったはずなのに少しずつ身体全体が動かなくなり、最後には呼吸も困難になり死亡してしまうという難病です。しかし経過が非常に長いため、多くの人はベッドに寝たきりの状態で24時間介護によって生きていくという状態に落ちるのが普通です。筋肉の萎縮は徐々に進んでいくけれども、消化器の平滑筋の動きはあまり変わらず食べること排泄することは正常なままのようです。しかし自分の意思ではだんだん声も出せなくなるという状況で、一体自分はどのようにして生きていったらいいのだろうという疑問に答えられないまま時が過ぎていくというのが現状のようです。

この病気は原因不明のまま難病に指定されています。誰が発症するかという原因もわからず、どうして自分がなってしまったのだろうと言う疑問を抱えたまま病状が悪化していきます。まだ瞼を動かしている間は目の動きで言葉を伝えたり意思疎通ができる状況にはありますが、自分で全く動けないということが絶望に陥ってしまう原因の一つです。最近の小説で「こんな夜中にバナナかよ」という小説があり映画にもなっていましたが、この人もこの病気だったようです。この方は家族に迷惑をかけないように自分で独り立ちし、自分で介護のボランティアを常時集めて生活するという状況を作っていました。最終的には亡くなってしまいましたが、自立を目指した難病の患者さんだったということです。

私がこの病気に興味を持ったのは、2年前に誤診ではありましたが、この病気だと診断された事があったからです。最初は肘部管症候群尺骨神経麻痺と診断され安静治療をしていましたが、良くなる気配がないので3週間後再びこの整形外科を受診したところ、手の表面の感覚の違いなどを診断した結果、「あなたの病気は ALS に間違いない」と断言されました。早めに専門病院に行って診断を受けた方が良いと勧められ、3日後に予約が取れたので専門病院へ行くことになりました。その日から3日間この病気のことを色々と調べて、私はこれから一体どのようにして生活していかなければならないのだろうかといろいろと悩みました。身体が動かなくなったら意思疎通ができるとしても、結局は自分では何もできないので、ある程度のところで自分で命を絶つということを考えるようになりました。でもよく考えてみると、この病気が重篤化した後は自分では動ける状態ではないということが考えられます。今回の事件のように他人に安楽死をして頂くように頼む以外には方法がないようです。呼吸が難しくなり人工呼吸器をつけた状態でも10年以上生存することもあるそうです。自分にとってまた家族にとってどうすることが一番いいことなのか、誰にも分かりませんね。

私の場合はたまたま誤診であることが判明し、3日後には尺骨神経麻痺の手術の準備ということになりましたが、実際に ALS だと診断された方がどのような気持ちで将来を見据えるのかということは想像に絶するほど大変なことです。

私はそのような誤診を受けるまで真剣に考えたことはありませんでしたが、その3日間で考えたことは、最終的に本人の意思が確認できれば今回のような医師による安楽死という行為も許されるのではないかと考えました。そうは言っても日本では法律が許されません。私自身はその当時そのように考えたましたが、ALS患者本人からは死ぬ権利より生きる権利を守るべきという意見が出ています。外国では尊厳死を容認する国もあるようですが、日本人の今の感覚ではなかなかそういう法改正も進まないのではないでしょう。

何事についても同様とは思いますが、自分の今の立場のまま、本当に相手の立場や気持ちを理解するということはなかなかできることではないようですね。