核のゴミ

北海道の寿都町が、原子力発電所から出る放射性廃棄物、いわゆる“核のゴミ”の最終処分場建設に向けた調査への応募を検討していることがわかりました。国内にはまだ、原子力発電所から出る高レベルの放射性廃棄物を地中深くに埋める処分場はありません。調査の第一段階になるのは『文献調査』です。約2年をかけ、過去に起きた地震や地質について調べます。

寿都町は「風のまち」として有名な町で、住民合意と環境配慮をふまえて道内でも珍しい公設風力発電を設置し、売電によって町財政にも繰入れてきました。養殖牡蛎も他の自治体との差別化をすすめ、これも道内でも珍しく5月の連休後の出荷をすすめてきた町です。北海道寿都町・片岡春雄町長は「結構その交付金はおいしいものがあるよねって。ただそれ欲しさにやるのではなくて、コロナで相当この町も痛めつけられて、来年度以降、これからの財政どうなっていくんでしょうと」 と述べていますが、北海道には「放射性廃棄物の持ち込みは、慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」とする条例があり、鈴木北海道知事は条例を遵守して頂きたいと述べています。これに対し、片岡春雄町長は「原発は受け入れといて、最終(処分場)は受け入れないよというのは、いかがなものかなと個人的にはそう思いますがね」とも述べています。調査検討のきっかけとなったのは、胆振東部地震後に今後の防災のために地質調査の補助金を調べていた事を挙げ、「地質調査までやらなければ意味がない。概要調査までは近隣市町村や道の意見は聞かない。」と述べているようです。

では、この受け入れによってどんなメリットがあるのか、

調査は3段階あり、最初の文献調査(2年)は過去の地震などを調べ、次の概要調査(約4年)は地質調査、最後の精密調査(約14年)は地下深部に調査施設を設ける。最初の2段階、文献調査と概要調査だけで約90億円の地方交付金が支給されます。

この交付金は町財政にとっては大変大きな金額になり、財政的には魅力あるものではあります。しかし、国のこのような方法は、原子力発電所誘致の時代も利用され、「原発は安全です」と宣伝し、東京には造らず、地方交付金を武器にして財政の苦しい市町村に受け入れをさせてきた経緯があります。

2007年に調査への参加を表明した高知県東洋町では、町を二分する議論になり、応募を取り下げました。

橋本大二郎高知県知事(2007年当時)は「お金で頬を張って、こうした施設を地域に受け入れさせる国の原子力政策そのものが間違っている」と述べています。今更言っても遅すぎますが、原発政策を始める段階で、最終処分の問題も国の政策として方向性を示しておくべきだったのではないでしょうか。