コロナウイルスは牛にも?

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コロナ禍も約2年間にわたり、緊急事態宣言も国民の間にはインパクトがなくなってきています。それなのに更に感染力の強い変異ウイルスが陽性者の8割、9割を占めるようになり猛威を振るっています。

さて、このコロナウイルスが人と同じ様に牛の場合も重度の肺炎を起こすかと言うとそうではない様です。

コロナウイルスは、遺伝学的特徴からα、β、γならびにδのグループに分類される大きなファミリーです。
あるものは人々に病気を引き起こし、あるものはウシ、ラクダ、ネコ、コウモリを含む動物の間で循環します。

最近登場した新型コロナウイルス(2019-nCoV)は、すでに報告されているウシコロナウイルス、中東呼吸器症候群(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)などと同じくβコロナウイルスに分類されていますが、2019-nCoVは、ウシコロナウイルスとは異なります。

ウシへ感染するかなど詳細については不明です。
今後の調査により詳しい状況が判明すると思います。


【回答者】
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類
教授 萩原 克郎

我々獣医師が日常臨床的に遭遇するのは、ほとんどが下痢(腸炎)です。

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このコロナウイルス感染による腸炎(下痢)を起こす伝染病で、成牛に感染した場合は生産する牛乳の量(泌乳量)が大幅に減少します。

流行は主に、畜舎で並んで飼養されている牛群で発生するため、流行が起こると大きな経済的損失が起きます。

下痢便や鼻汁を介して経口感染します。人の場合は、マスクの着用、黙食、ソーシャルディスタンス等の予防方法が提唱されていますが、牛は並んで繋がれている場合が多く、マスクもできないし、ソーシャルディスタンスも無理なので一頭が発症すると瞬く間に牛舎全体に拡がります。

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そのため、牛舎内にコロウイルスを持ち込まないことが大事な予防法となります。つまり、このコロナウイルスの流行している牛舎から直接(長靴や衣服の着替えや消毒をしないで)新しい牛舎に入ったりしないことがポイントとなっています。牛舎に出入りする人間が病気に罹っている牛の鼻汁や唾液の飛沫(ウイルスを含んでいる)を運んでしまうのが感染が広がる原因になります。

人のコロナウイルス予防対策でも、人の流れを制限することを盛んに訴えていますが、テレビで都会の映像を見ていると、日本では全く効果が出てない様ですね。

オーストラリアの様に一人陽性者が出た段階で、直ぐに街をロックダウンしてしまうくらいでなければ人流制限による予防は無理な様ですね。

コロナのワクチンは牛の世界では既に利用されており、牛の病気の発症が一番多い分娩に合わせて、分娩前にワクチン接種が行われています。実際に接種している牛舎ではかなりの効果が見られます。

人のコロナワクチンの接種も徐々に進んでいる様ですが、早く2回の接種が終了できる様になるといいとは思います。

変異株が主流になりつつあるようなので、2回のワクチン接種が完了してもコロナウイルスに感染しないとは言い切れないとは思いますが、少なくとも重症化を避けることはできそうなので、積極的に接種完了を目指すことが大切でしょう。