全国各地に観光牧場で、乳しぼり体験をやっているところは、沢山あると思います。
皆さんも、小さい頃に体験した経験があるのではないでしょうか。昔の話なので忘れてしまったかもしれませんが、家に帰ってからお腹が下った経験はありませんか?
昔はいちいち手洗い等はしなかったと思いますが、現在は、乳しぼり体験後は必ず手洗いを指導するように義務付けられています。
これは現在大多数の乳牛が、下痢を起こす原虫(寄生虫)を持っているためで、この寄生虫をクリプトスポロディウムといいます。
これは、子牛の口から感染し、腸管内に寄生することにより水様性の下痢を発症させます。
整腸剤を飲ませたりしながら、一週間程度で治って行きます。
牧場で哺乳を担当する新米従業員さんは、最初の頃に必ずこの下痢に罹ります。
同じように、普段、牛に接触しない人が、観光牧場などでの乳しぼり体験で牛に接触し、手洗いを充分行わないと、手に付着したクリプトスポロディウム原虫が手から経口感染してしまいます。
この下痢症に感染してしまうと、特効薬はないので整腸剤等の対症療法で自然治癒を一週間くらい待つことになります。
以下は平成21年度食品安全委員会安全確保総合調査からの抜粋です。
1)クリプトスポリジウムの概要
(1)病原体と疾病の概要
1907 年に実験用マウスから初めてクリプトスポリジウム原虫が発見されて以来、本虫は主に形態 的に分類されてきた。1976 年に初の人体症例が発見され、1993 年には米国ミルウォーキーで塩素 に抵抗性の高い本虫のオーシストに汚染された水道水の飲水後、下痢を主症状とする約 40 万人 の患者が発生した。このような様式での患者発生は欧州、特に英国でも増加し、日本でも 1996 年 に埼玉県越生町で水道水を飲んだ住民の約 70%が発症する事態に至り、経口感染する水系の新 興感染症として注目された。健常者では本症に罹患しても自然治癒するが、AIDS 等免疫不全状 態のヒトでは衰弱死することもある。
家畜では特効薬がないので、下痢に対する対症療法で対応して1週間程度で治っていきますが、人間では、免疫不全状態の人が感染した場合、使用する薬剤が準備されているようです。