アキレス腱断裂

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日常生活の中で、時々聞くことのあるアキレス腱断裂という病気があります。

アキレス腱断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作でふくらはぎの筋肉(下腿三頭

筋) が急激に収縮した時や、着地動作などで急に筋肉が伸ばされたりした時に発生します。 腱

の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤にあると考えられています。 30~50歳のスポーツ愛

好家に多く、レクリエーション中の受傷が多いのが特徴です。

断裂の瞬間は「ボールが当たった」「後ろから蹴られた」ように感じ、痛みが生じます。

アキレス腱断裂の治療には、手術をする手術的治療と手術をしない保存的治療があります。
このうち、後者の保存的治療では長期の固定や免荷(体重をかけれない状態の事)を必要とし、筋力や関節の可動域の回復が悪くなります

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牛にもこれと似たような症状を表す病気があります。

特に乳牛は分娩後の病気として、低カルシウム血症を主徴とする乳熱やダウナー症候群(起立

不能症候群)を多く発症し、その治療経過中に後躯の筋損傷を発症します。

この重傷の筋損傷が筋断裂と言われます。好発部位は、後肢の下腿筋(腓腹筋、浅趾屈筋)、

内転筋です。

特徴的なのが、人間のアキレス腱断裂に相当する腓腹筋断裂です。人のアキレス腱断裂は踵に

近い部分の腱が損傷しますが、牛の場合は、もう少し上の腓腹筋が断裂してしまいます。この

筋肉は大腿骨から飛節に繋がっていて、人間ではふくらはぎに相当します。この断裂により飛

節から先が延ばせなくなり写真のような姿勢になってしまいます。

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牛はそれでも立とうとするから左の写真のように飛節から先を平らに着地したまま、まるでカ

ンガルーのような後肢の形で立ちます。

断裂が不完全な場合は右の写真のように起立可能でナックルという症状の場合もあります。

 

時間が経過すると筋組織の損傷以外にも挫傷や褥創から常在菌の感染や、移動の際に生じる前

膝の挫傷からの感染によるフレグモーネにより前肢も重篤な筋損傷となる場合が多くなります。

牛のような大家畜の場合は残念ながら淘汰の対象となります。