中耳炎

f:id:sinmaisinia:20220222092537p:plain

耳は外耳、中耳、内耳から構成されていて、中耳は耳管で鼻腔と連絡しています。

鼓膜の奥の中耳で炎症を起こしたものが「中耳炎」です。
 いろいろな中耳炎がありますが、その中でも最も多く、一般的に中耳炎と言われているのが急性中耳炎です。鼻の細菌やウィルスが、鼻の奥から中耳につながる耳管(じかん)を通って中耳に入り、炎症を引き起こします。耳に激しい痛みがあり、聞こえも悪くなり耳がつまる感じがします。中耳には膿がたまり、症状が進むと鼓膜が破れて耳から膿が出てくることがあります。乳児では痛みを訴えられないので、機嫌が悪くぐずったりします。鼓膜は赤く腫れ上がります。抗菌薬の内服や耳の処置、必要に応じて鼓膜を切開して中の膿を出して治療します。
 痛みのない中耳炎もあります。急性中耳炎の後などに鼓膜の内側に貯留液が残り、その結果鼓膜が動きにくくなり聞こえが悪くなる滲出性中耳炎です。子供は順応性が高いため聞こえの悪さに気づかないことがありますので注意が必要です。検査で聴力や鼓膜の動きを調べることにより確認できます。治療は鼻から耳に空気を送る耳管通気(じかんつうき)という処置をしたり、鼓膜を切開して中の滲出液を出したりします。治療には時間がかかる場合も多いので、医師と相談しながら根気強く通院しましょう。症状を繰り返すときには鼓膜にチューブを入れる手術をすることもあります。
 急性中耳炎や滲出性中耳炎は治らないと慢性中耳炎などに移行し、手術が必要になることがあります。中耳炎は耳鼻咽喉科医師のもとでしっかり治しましょう。

f:id:sinmaisinia:20220127143546j:plain     f:id:sinmaisinia:20220127143600j:plain

牛にもマイコプラズマ(Mycoplasma  bovis)が耳管を通して中耳に感染するマイコプラズマ中耳炎があります。

子牛のマイコ中耳炎は3から6週令で多発し、肺炎や関節炎を併発している場合が多くみられます。

f:id:sinmaisinia:20220127153520j:plain      f:id:sinmaisinia:20220127153604j:plain

人の場合は細菌による中耳炎で、抗生物質の効果がありますが、子牛の感染するマイコプラズマは細菌より小さい微生物で、細胞壁がないため抗生物質による治療効果が低く、一旦発症してしまうと治らないことが多くなっています。

治りにくい疾病であるため、予防策としてワクチン接種と抗生物質の投与が推奨されています。

臨床現場では、耳道(中耳、耳管)洗浄が行われており一定の効果はみられますが、非可視下の治療は、鼓膜を破る際の子牛への疼痛ストレス、外耳内の汚染物が中耳や耳管に入る危険性、炎症を波及させ中耳炎を悪化させる危険性があります。そのため、可視下で行う内視鏡療法が疼痛ストレスがないことから家畜福祉の面からも推奨されています。

私も小学校5年生の頃、中耳炎を発症し耳鼻科で鼓膜を切開され、あまりの疼痛のため大泣きした思い出が今も鮮明に残っています。そのためか子牛にまだ耳道洗浄は一度も行っていません。