牛乳はどれだけたくさん出るの?

本当は自分の子供を育てるために出している牛乳なんだけど、今の日本で飼われている搾乳のための牛(その代表的なホルスタイン種)ではどれくらいの量の牛乳(これを泌乳量と言います)が搾られているんだろうね。

うんちやおしっこの量は食べる量によって変わるけど、搾乳牛の場合1日当たり45~50kgのうんちと15kgのおしっこを出すのよ。 出されたうんちを発酵させたものを堆肥といい、畑に撒いて牧草などの肥料にするんだよ。

私が就職した約40年前は乳牛の1年間に出る牛乳の量は、約5,000kgだったよ。それがよく牛乳の出る系統のお父さん(種雄牛)を次の代に残すように改良が重ねられてきた結果として,1年間に約9,000kgもの牛乳が出るようになったんだよ。

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     (農林水産省「畜産統計」他 のデータ)

 

1日に出る牛乳の量としては、分娩直後は1日当たり20kgくらいだけど、分娩してから約2カ月で最も多くなり、一日に30~50kg、中には60kg以上も出す牛もいるよ。60Kgといえば大人の体重だよ。現在飼われている乳牛は、人間が利用するために泌乳量が増えるよう改良されてて、1年間に約9,000kgの牛乳を搾り取られているのだよ。なかには1日当たり70kg、1年間で20,000kgを超える牛乳を出す牛もいて「スーパーカウ」と言われているよ。

 

じゃ、実際に子牛を育てるのにはどれくらいの牛乳の量が必要なんだろうか。考えてみたことある?

和牛の場合では、子牛を産んでから6ヶ月間に486kg出たという報告があり、これを一日量に換算すると3kg弱にしかならないんだけど、体重がホルスタイン子牛の半分くらいしかない和牛の子牛には適当な乳量なのかも知れないね。

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生まれた和牛子牛は母牛から直接牛乳を飲んで、約半年一緒に生活するよ。その後、哺乳を止めて乾草等の餌を食べるようになって独り立ちするんだよ。

 

この数字を単純に一年分に換算してみると、多めに見積もっても1年間に1,000kgにしかなならない。つまり、現在牛乳を搾るために飼われている母牛たちは、1年間に子牛を育てるのに必要な量の約9倍もの乳量を搾られていることになっているね。

だから、牛の本当の食べ物である牧草だけではなく、配合飼料っていわれる穀類まで食べさせられているんだよ。本当は食べなくてもよい穀類を沢山食べさせられて色々な病気になってししまうんだよ。

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人の場合の乳腺炎と同じ乳房炎や、不妊症と同じ繁殖障害などがよくみられるよ。

乳房炎は4本ある乳頭のうちどれかが細菌が感染して炎症をおこし、全身に熱が出たりその乳頭から牛乳が出なくなってしまうこともあるんだよ。

繁殖障害は、次のお産のために妊娠しようとしても妊娠できない状況が続いてしまう病気。

 

いくら家畜として飼われているとはいえ、かわいそうだよね。

 

 

 

 



牛の分娩の流れ

牛のお産はどのように行われるのか。ここで説明してみるよ。

牛は分娩予定日が近づいてくると、乳房が張ったり、尾の付け根が窪んだり分娩兆候が見え始める。

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写真のように分娩に先立って骨盤の靱帯が弛緩するために、尾の付け根(尾根部)が陥没するんだよ。

 

分娩が始まると、尾を上げて、立ったり座ったり落ち着きのない様子になり、

次に陣痛が強くなってきて、一定の間隔で陣痛がくるようになるよ。この間隔と強さがまだ弱い時は立った状態のままですが、時間が経過し陣痛が強くなってくると、母牛は寝転んで陣痛が来る度に如何にも苦しそうな鳴き声を出すようになる。

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母牛の陣痛がより一層強くなり胎子が産道内へ進んでくると、写真のような胎子を覆う一番外側の袋(尿膜)が破れ、水のようなさらっとした液体が出る。この液体は胎児の尿が一旦溜まっているといわれている。これが一次破水、これは外で破れる前に膣の中(産道の途中)で破水してしまう場合も多いんだよ。

個体差はあるけど、尾の挙上が見られてから一次破水までに平均3〜6時間くらいかかるのが普通だよ。

一次破水が終わると、30分から2時間くらいで胎児と羊水の入った二次の胎胞が陣痛と共に出てくるよ。

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この状態で陣痛が続きニ次破水が起きる。ニ次破水と共に出て来る液体は、胎児が陣痛で押し出されやすい様に、ドロドロした半透明の液体(羊水)なんだよ。

陣痛と共に胎児が押し出され、前肢に続いて頭が出てくる。

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ここまでくれば、後は陣痛と共に出生するよ。

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このような経過でお産しますが、母牛のお腹の中で次のような状態でいるよ。

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普通はこの模式図のような体勢で陣痛を待っていますが、難産も色々発生することが多いよ。

前肢が出ないで顔だけが先に出てしまう場合、後肢から出てくる場合、お尻から出て来る場合など色々な難産があり、その時は依頼を受けて獣医師が往診することになるよ。

正常なお産は農家の人たちで処理されていくので、獣医の出番はあまりないのが普通なんだよ。

 

妊娠の方法? どうするの?

牛乳を搾る(搾乳)ために飼われている牛たちは、お産することにより牛乳が出はじめるけど、では、どうやって妊娠しお産するのだろうね。

酪農の牧場には、雌牛しか飼われていないのは知ってる?。雄牛は成長しても牛乳を搾れる訳ではないので、生まれてから一週間くらいで市場に売られてしまうのよ。ドンナドンナの歌みたいにね。

では、どうやって妊娠するのだろうか。肉牛などの場合は、昔は雌の群の中に雄牛を1頭入れておいて雄牛が勝手に種付けして歩く、所謂、「まき牛」という方法を多くとっていたんだよね。

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放牧された雌牛の群の中に写真の様な種雄牛を1頭入れて「まき牛」を行ってい

 

現在では、凍結精液といって精液を0.5mlのストローに充填し凍結したものが簡単に流通し、いろんな種類の精液を容易に入手することができるようになったため、人工授精が行われるようになっているよ。

雌牛だけの牛群の中でどの牛に人工授精を実施するのか?

雌牛だけの群でも、その中に発情の牛(雄牛を許容できる、排卵直前の状態)がいると雌牛同士で乗り合う乗駕行動という行動をする。その時、乗られてもじっとして動かない牛(スタンディング発情と言われる行動)が人工授精を実施できる牛と判断できるんだよ。

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人工授精というと一体どうやるのかな?

0.5mlのストローに入った凍結精液(冷凍保存)をお湯で溶かして、注入器という器具に装着し、これを獣医師か人工授精師が雌牛の子宮の中に入れるんだよ。

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上の写真が精液の入ったストローです。これを下の注入器に装着し、人工授精をする。


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直腸検査といって片方の腕を肛門から入れて、直腸の壁を通して子宮の上から入り口を捕んで、注入器を子宮内に誘導、反対の手で注入器の中芯を押して精液を子宮に出す

 

こうして母牛はめでたく妊娠。上手くいけば1回で妊娠するけど、最近の調査データでは2回から3回くらい性周期(平均21日)ごとに人工授精を繰り返してようやく妊娠することが多くなっているみたい。乳量が少なかった時代は1回くらいで妊娠するのだ普通だったけど、品種改良が進み乳量が増加するに従って次第に妊娠しずらくなってきているんだよ。

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直腸検査や超音波装置、牛乳の中に出てくるタンパク質の測定等により妊娠鑑定して妊娠が確定したら出産の予定日を決めるよ。

牛の場合は、人工授精の実施日の月数から3を引いて、日に7を足した月日を出産予定日と決めているよ。例えば、7月6日に人工授精が行われたとき、月数の7から3を引いて4月、日数の6に7を足して13日、つまり来年の4月13日がめでたい出産の予定日となる。間に2月があるかないかにより多少異なりますが、妊娠期間281日から283日が出産予定日となる。

最終生理を基準にして280日を足して予定日とする人間の場合とは少し違うけど、これは人間は排卵日がはっきり決められないためなんだよね。

牛は発情の翌日が排卵日だよ。

 

 

 

牛乳を作り出すのはどこ?

牛乳は出産しなければ出るようにならないんだけど、その乳房はどの様に発達してくるのか知ってる?

人間の場合は、お産しなくても乳房が大きい人や小さい人 色々な人がいるよね。でも、動物の場合は違うんだよ。

牛は、初めてお産をするまでは乳房の膨らみは全くないよ。小さい乳頭のみがついているのが分かる程度。

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左の写真は真後ろから見た股間。この左の写真にある乳頭だけの乳房が、妊娠し、お産が近づいてくるに従って右の写真の様に膨らんで本物の乳房になっていくんだよ。この時は乳房の中で、牛乳を作り出すための組織である乳腺がどんどん発達しているよ。

 

それでは乳腺組織ってどんな物なのか。模式図で見てみよう。

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乳房の中に筋上皮細胞に覆われた乳腺組織が沢山発達し、乳房が膨らんでいくよ。

この乳腺細胞に血液が流れると、沢山あるそれぞれの乳腺胞腔にホルモンの働きにより牛乳が作られ、溜まった牛乳がオキシトシンというホルモンの働きにより乳腺槽へ送られ、乳頭槽を通って出ていくことになるんだよ。

人体でも同様なことが起こりますが、人ではオキシトシンは幸せホルモンと言われますね。

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子牛を育てる牛乳を出すために、母牛は幸せな気分になるということですね。

牛乳を乳腺細胞で作り出すのに血液が必要ですが、では、どれくらいの血液量が必要なのだろうか。

牛乳1リットルを作りだすのに約500リットルの血液が乳腺細胞に流れ込むんだよ。ホルスタイン種は1日20リットルから30リットルの牛乳が出るけど、血液量としては10000リットルから15000リットルもの血液が乳腺細胞に流れることが必要なんだよ。

通常、体重の13分の1がその動物の血液量と言われているけど、現在飼われているホルスタイン種の場合、大人になって大体600kgから800kgの体重があるので、46リットルから61リットルの血液が体内を循環していることになるよ。

これを平均50リットルが体内循環していると考えると、200回から300回血液が体内を循環していることになり、その他にも、血液は全身の筋肉その他に沢山の酸素を供給するために体内を循環しているので、肺で酸素交換した血液を全身に送り出している心臓は本当に大事な臓器だよね。

牛は全身を使って牛乳を出していることが分かったよね。 本当に大変だね。牛さんは。

 

牛乳は、なぜ飲まれなくなってきたのか?

牛乳は私たちの生活の中でどのような役割を果たしているのかね?。

私たちが小学校や中学校へ通っていた昭和の時代は、まだまだ家庭の食事でも子供の成長に必要な栄養分を十分に取ることが出来なかったから、学校給食の中で栄養分補助食品としての牛乳は大いに役立っていたんだよね。

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でも、飽食の時代と言われフードロスの多い現代は、牛乳の役割そのものもかなり変化してしまったと言えるよね。値段もかなり安く、色々な清涼飲料水よりは安く、時には水よりも安い値段の時があるね。

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飲むために販売されている牛乳は、牛から搾乳されて出荷された生の乳を、殺菌して無調整のままパックに詰めて販売しているもので、

代表的な牛乳の成分としては次のような表示を見たことがあるでしょ。

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牛乳はカルシュウムの補給に良いと一般的によく言われているけど、ミネラルの他にもビタミンが沢山含まれていて、栄養補給にはもってこいの飲料と言えるんじゃない。

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牛乳の水以外の部分は乳固形分といい、乳固形分は乳脂肪分と無脂乳固形分に別れます。昔から脂肪が一番注目されてて、母牛を改良する場合も主に乳の脂肪分と量に注目して改良が行われてきたのだけど、最近は無脂固形分にも着目した改良が行われるようになっているよ。

牛乳があまり飲まれないようになってしまったのは、栄養があってもその味が今の時代の人々には受け入れられなくて、また飲んだらお腹がゴロゴロする乳糖不耐症(アジア人に多い)が日本人にも多いことが原因かもしれないね。

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生乳をそのまま飲んだら風味もあって美味しいけど、殺菌することが法律で義務付けられているので乳業会社は必ず殺菌してから出荷しているんだよ。

上の図に見られるようにその牛乳がどのような方法で殺菌されたかが表示されてて、例えばこの牛乳の場合は、120度で2秒間で殺菌したと表示してあるよ。

最善を尽くして雑菌が混入しないように搾乳作業を実施し工場へ出荷しても、僅かに生菌が混ざってしまっていることがあるので、この菌を牛乳の製品の中に残したまま消費者へ出荷してしまうと、爆発的に増殖して腐ってしまうことが予想されるんだよ。だから殺菌が義務付けられているんだよ。

でもね、この高温の殺菌方法が牛乳本来の美味しい味と風味を失わせてしまう原因となっているのは間違いないと思うよ。折角、酪農家さんが美味しい生乳を搾るために、餌を収穫する畑の土地改良や牛の健康管理に気を配っているのに、製品になる最後に殺菌により風味を失った美味しくないものにしてしまっているのは残念なことだよね。私は職業柄、搾乳現場で搾乳されたそのままの生乳を飲んだことがありますが、今まで味わった経験のない素晴らしい風味と味だったよ。

高温殺菌されてない牛乳を消費者に提供することできれば、食卓に上がる機会もまだまだ多くなっていくのではないかなあ。

現在、販売されている牛乳の中で、少しその風味を保ったまま販売されているものがあり、それが低温殺菌牛乳だよ。

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低温殺菌牛乳とは先程の高温殺菌ではなく、上の表示に見えるように、60度30分、78度20分等の低温で少し長く殺菌され販売してる牛乳。

この写真は北海道の地方生産の牛乳だけど、サツラク乳業や小林牧場の低温殺菌牛乳も美味しいよ。

一度、飲んでみて!!

牛乳の搾り方

 

みなさん、観光牧場で搾乳体験として手搾りを体験したことある人いるかな?

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乳搾りの始まりは手搾りだったのよ。

酪農業の最初の頃は、一軒の農家に1頭か2頭の乳牛を飼って、手搾りで乳搾りし、ウンコやオシッコは堆肥として発酵、畑の栄養源として利用するところから始ったんだよ。

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北海道を例にとれば、明治の開拓時代にエドウィン・ダンというおじ様がアメリカから日本に来てその指導により酪農が始まり、開拓農家に1、2頭の乳牛が飼われるようになっていったんだよ。

昔の乳牛は、まだあまり品種改良されていないので乳量少なく、世間的にも冷蔵庫なども普及していなかったので、牛乳は手に入ることも少なくてね、手搾りでも十分に間に合ったのよ。1960年頃まで手搾りが主流で、ミルカーという機械搾乳が本格的に利用され様になったのは大阪万博、よど号ハイジャック事件、日本をニッポンの呼び名に統一、三島由紀夫割腹事件なんかがあった1970年代からなんだよね。

私には、記憶にあることばかりなのでそんなに昔でないような気がするけど、計算してみるとなんと約50年も前の頃だよね。

随分昔だな。50年もの間、機械搾乳の欠点である乳房炎の発生を克服できずにいるということは、子牛による哺乳が生き物の営みとして自然で、機械搾乳という人間の搾取は如何に不自然なことであるかを物語っているよね。

 

ミルカーの種類は2つに分けられ、「バケツ(バケット)型」と「パイプライン型」があり、機械搾乳の始まりは、バケット型だけで搾乳が行われていたんだよ。

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バケットミルカーで搾乳していた頃は、搾乳した牛乳(約20kgから30kg)を人力でバルククーラー(搾乳した牛乳を冷却して貯蔵しておくもの)の中へ入れなければならなくて、これが重くて重くて酪農家の重労働の一つだったんだよ。

 

f:id:sinmaisinia:20210103160525j:plainバルククーラー 

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クーラーの中は羽が回って自動的に撹拌されているよ。

 

バッケットの牛乳をバルククーラーにあける重労働から解放したのが、パイプラインミルカーだよね。

 牛から搾り出したお乳を直接牛乳処理室までパイプで送乳する方式で、運ぶ手間がはぶけるため、中・大規 模の経営の酪農が使っているよ。

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                カウシェイド用パイプラ インミルカー

現在、バケツ型は子牛に飲ませる牛乳、乳房炎および治療中の出荷できない牛乳の搾乳に使っていて、パイプライン型は、牛舎内にミルクの通路になるパイプとミルカーを真空にする為のパイプの2種類のパイプがつけられていて、その2つのパイプラインを使って出荷用の牛乳を搾っているよ。

パイプラインミルカーは、牛舎内で使用するカウシェイド用パイプラ インミルカーと、「通称パーラー」といわれる専用搾乳室で使われるミルキングパーラー用パイプライン ミルカーの 2 種類があって、補助事業などで「パーラー」が増えつつあるよ。

f:id:sinmaisinia:20210103161826j:plainミルキングパーラー用パイプライン ミルカー

 

カウシェイド用パイプラインミルカーは小規模、中規模酪農家で、ミルキングパーラー用ミルカーは大規模酪農家で使っている。

ミルカーの装着の時、カウシェイド用は中腰にならなければならず腰が痛くなりやすいけれど、ミルキングパーラー用は起立したまま装着できるので腰に負担がかからないのが非常にいいんだねこれが。だから多少値段が高くても、腰に自信がなく、経済的に余裕のある酪農家は100頭以下の少ない頭数でもミルキングパーラーを利用しているんだよ。

 

最近では「搾乳ロボット」も登場、アメリカやカナダ等の海外や北海道の酪農家さんの間で普及しつつあるよ。

搾乳ロボットとは、それぞれの牛個体のデータをセンサーで読み取り、乳量や乳房の形を読み取り、全自動で搾乳を行ってくれるという、農家にとっては夢のような機械なんだな。でも値段は非常に高く、60頭用で約3、000万円近くするのでそう簡単には使うことができなかったんだよね。

でも、最近では国のクラスター事業(かなり高い補助率)で多くの農家が取り入れ始めていて、酪農家の人も労働が楽になってはきてはいるけど、近い将来、この搾乳ロボットの更新時期が来た時に国が今のような補助事業を行ってくれるかどうかが、すごく心配。

牛乳って?

牛乳って? エ〰 そんなのみんな知ってるべさね。漢字の通り牛の乳ださ。

遠い昔、原始人が牛を家畜として飼い始めてから、なんと仔牛が飲むための乳を自分が飲みたくて、手で絞って横取りを始めたのさ。

みんなは「うし」というとどんな動物を想像する?

日本では、牛乳を搾るための乳牛か、但馬牛などで有名な肉牛がうかんでくるしょ。

でも、世界には多種多様な乳牛や肉牛がいてさ、日本でもよく見る白と黒の斑模様のホルスタイン種やあんまり馴染みの無い灰色のブラウンスイス種などの乳牛。

アバディーンアンガス種やヘレフォード種などの肉用種、乳肉兼用種のシンメンタールなども家畜として飼われているのさ。

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ホルスタイン種            ブラウンスイス種

この2種類が日本で見られる乳牛だけど、左写真のホルスタインがほとんどで、ブラウンスイスは滅多に見ないよね。

 

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アバディーンアンガス種           黒毛和種

 

特に黒毛和種は、日本固有の肉牛として、生体(生きたまま)や凍結精液(ほら、人工授精に使う牛の種さ)は海外に輸出しない方針を国がとってしまっているのよ、そして国内でも「我が県の種牛は絶対に他の県には出さない」というせま〜い考え方が未だにはびこっているのさね。

もう少し頭柔らかくて、みんなで情報共有した方がより美味しい肉を作ることができると思うんだけどね。

でも、もう既にオーストラリアやアメリカでは、なぜか黒毛和種がいるんだわ。以前にテレビでやってたけど、昔、和牛農家が勝手に生体を輸出したらしいよ。

 

さて、上にある2枚の写真(アバディーンアンガスと黒毛和種)、皆さんには同じ牛にみえないかい?この2種類の種類の違いわかるかな?

気がついた? 黒毛和種は角があるけど、アバディーンアンガスは角が無いんだよね。

 

さて、みんなの生活の中で乳牛と関連したことといえば、色々あるとは思うけど、学校給食でいっつも出ていた牛乳じゃないかい? もちろん、ヨーグルトやチーズ等の加工乳製品も食べているとは思うけど、なんと言っても牛乳が最も身近にあるんじゃない?

では、牛乳はどんな物で、どのように作られるのか。

皆さん、考えたことはある?

写真などでよく見かけるあのオッパイの大きいホルスタイン種を飼えば、牛乳を搾り続けられると思ってない?

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違うんだなこれが。ホルスタイン種は牛乳を沢山搾るために改良されてきた種ではあるんだけど、本来は動物、牛乳は子牛に授乳し、育てるためのものだよ。

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子牛を育てるための牛乳を食品にするのに、人間が家畜として乳牛を飼って機械で搾り(搾乳)、食品として手を加え(殺菌)て販売する つまり、子牛を妊娠し産まなければ牛乳は出ないんだよ。

乳牛を飼っている酪農家は、牛の健康状態を観察しながら、牛に人工授精を実施し妊娠させ、約290日後にはお産(分娩)できるように管理しているけど、 現実的には平均で430日くらい(北海道の平均)に一回出産できるようになってるよ。

お産した牛の牛乳は4、5日くらいは「初乳」と言って子牛に渡すための免疫タンパク質の沢山含まれた牛乳が出るため、この期間のものは子牛に沢山飲ませて、子牛を健康的に育てる基礎的な免疫力を持ってもらうんだよ。この時期を過ぎたものは全て搾乳により搾り取られ、バルククーラーというタンクに貯留されてから、専用のタンクローリーにより出荷されてしまうのよね。 お母さん牛 かわいそう!

 

少し分かってもらえたかい? 牛乳は乳牛からずっと搾り続けられるのではないよ。