牛の乳房炎 原因と症状 

f:id:sinmaisinia:20210626123036p:plain

乳牛の病気には、人間と同様で色々なものがありますが、最も代表的なものが乳房炎です。

人でも赤ちゃんに授乳の期間に、乳房の腫れや痛み、発熱を伴った状態になる場合があります。これが乳腺炎といわれています。

乳牛で同じ症状が出た場合が乳房炎です。酪農現場においてこの病気が発生し問題としてなっているのは、昭和の初めにミルカーによる機械搾乳が始まって以来、技術の進歩と共にミルカーも格段の性能の進歩がありますが、今だにこの病気は無くなりません。

他の職種で同じ一つの問題点を解決できないまま何十年も経過している分野はないと思います。でも、酪農分野における乳房炎は永遠の課題の様に感じられる問題です。やはり、乳牛は機械ではなく動物であることを考えれば当然のことかも知れません。だから、酪農は難しい職業です。

1、症状から分類

大きく 分けて「臨床型乳房炎」と「潜在型乳房炎」に分類されます。臨床型乳房炎とは肉眼的に乳房の異常を伴うもので、乳房が急に赤く腫れ上がったり痛がる場合(急性乳房炎)と、これらに加えて起立困難、脈および呼吸数の増加といった全身症状を伴う場合(甚急性乳房炎)があります。

臨床型乳房炎は牛乳や牛自体に肉眼的に認知できる症状が現れるので、すぐ治療になりその牛乳が出荷されることはありません。

でも、潜在性の乳房炎の場合、全身の症状が出ていないために細菌を含んだ牛乳が出荷されてしまう可能性はあります。消費者としてはこの点が気になりますが、製品にするときに高温殺菌しているので安心です。

 

2、感染経路から分類

乳房炎を感染経路から考えると、「伝染性乳房炎」と「環境性乳房炎」に分類されます。伝染性乳房炎とは、搾乳者の手指や搾乳器具を介して牛から牛へ伝搬する乳房炎です。主な菌種として、黄色ブドウ球菌や無乳性連鎖球菌があります。特に、黄色ブドウ球菌は日本でも広く分離(検出)される菌種です。乳房内に膿瘍(ピンポン玉から野球ボールぐらいのこぶ)を作り、多くの場合菌はこの中に潜みます。抗生物質で治療を行っても膿瘍の内部には薬が到達しないため、黄色ブドウ球菌の排除技術の構築は獣医学的にも大きな課題として位置付けられています。この菌は人の場合、食中毒の原因菌としても知られていますが、搾乳者は搾乳手袋の装着、一頭ごとの乳頭清拭など衛生的な搾乳を行っています。

環境性乳房炎は環境中(特にベッドなど)の菌が乳頭口(乳頭の入口)から侵入し、乳腺に定着することで発症に至るものです。菌の種類として大腸菌やクレブジエラ、さらに緑膿菌などがあります。環境の適切な管理が環境性乳房炎の制圧において重要であると同時に、通常は乳頭の入口にケラチン層という細菌の進入を防ぐ感染防御率の層がありますが、この感染防御能力が減退して細菌が侵入してしまう様です。これらの環境性の菌は徹底した衛生管理でも完全に防御は不可能です。特に大腸菌は通常の糞便の中に存在します。牛がこれらの菌に感染してしまう時は、「日和見感染」といって牛は体調的に弱った時に感染が成立するものといわれています。だから、乳牛はいつもストレスなく飼うことが必要なので、乳牛が気持ちよく生活できる様に農家の方は最大限努力しています。

f:id:sinmaisinia:20210626122449p:plainf:id:sinmaisinia:20210626122457j:plain

 

一番大きい第一胃(ルーメン)

f:id:sinmaisinia:20210422121425p:plain f:id:sinmaisinia:20210422121433j:plain

前回お話しした牛の胃は四つあり、皆さんは焼肉屋でそれぞれ4つの胃を食べたことがあるのでは無いでしょうか。

・第一胃(ルーメン)

f:id:sinmaisinia:20210422115821j:plain

第一胃を切り開くと蓑笠に似ていることから「ミノ」と呼ばれ、別名「ガツ」ともいいます。・

・第二胃

f:id:sinmaisinia:20210422120129j:plain

見た目が蜂の巣に見えるので「ハチノス」といわれます。

・第三胃

f:id:sinmaisinia:20210422120313j:plain

第三胃は「センマイ」といわれます。

・第四胃

f:id:sinmaisinia:20210422120521j:plain

第四胃は「ギアラ」と言われます。語源は労働者の報酬(ギャラ)からきたものともいわれます。

 

実は牛の体重の約15%が胃の重量と言われており、いかにその臓器が大きいかが伝わってきますよね。牛は基本的に草食ということもあって大量の草を食べなくてはならないわりに身体が大きいため、胃袋も大きくなくてはならないわけです。ルーメンは牛の体の中で一番大きい器官で、その内容物を含めると容積では200kg前後でドラム缶一本分のあります。構造的には外側から、漿膜層、筋層、粘膜層から成り立ちます。

牛のように草を大量に食べる動物は栄養が必要となりますが、草食の牛からすれば大量の草を消化するのも一苦労です。だからこそ、反芻を繰り返して消化を促進するわけです。反芻することで微生物が草を分解し、消化を助けてくれます。

反芻とは哺乳類が行う食べ物の摂取方法の1つで、食べ物を口で咀嚼して胃に送り、ある程度消化した後に再び口に戻して咀嚼することを言います。それを繰り返して食べ物を消化することを反芻と呼び、主に草食動物などに見られることが多いです。つまり、草食動物は、急いで草を食べて、安全な場所に行ってから、横臥(座る)してゆっくり反芻により消化を行います。

最初に、第一胃に入った草は第一胃から第二胃に移動してから、吐き戻され再び口の中で咀嚼されます。そして、流動物になって再び嚥下される(飲み込まれる)と食道溝反射により大部分が直接第三胃に流れ込みます。

この後、人間等の胃と同様の働きをする第四胃と腸により消化吸収されます。

f:id:sinmaisinia:20210405102524j:plain

第一胃内の発酵(ルーメン発酵)は、食べた飼料を宿主のエネルギー源に変換するためのものです。食べた飼料はまず口腔内で咀嚼され、ルーメンへと運ばれます。その後ルーメン壁への繊維の摩擦が刺激となってルーメンの連続した収縮が始まり、反芻が起こります。飼料は口腔内に吐き戻され、通常1回の反芻で50~70回の咀嚼を受け物理的に破壊されます。

第一胃内の微生物は発酵によって、飼料と水を揮発性脂肪酸 (VFA) とガス (メタンと二酸化炭素)に変換します。飼料中の繊維は細菌によって素早く分解され、VFAと乳酸になります。

f:id:sinmaisinia:20210422112135j:plain

草の消化過程はこのような順路になり、最終的にVFA(エネルギー源)と「あい気」になりますが、 この「あい気」が地球温暖化の要因とされているのは牛がかわいそうですね。

人間もたくさん二酸化炭素(CO2)を排出しているのにね。

 

 

胃が四つある動物

人間のや馬、犬、猫等の身近な動物は、普通に胃は一つですが、牛、緬羊、やぎ等は胃が四つあります。

胃が四つある動物たちは、一般的には反芻動物といわれます。お聞きになったことはありますか?

反芻とは何か? これは一度飲み込んだ牧草等を、もう一度胃から口の中に戻してからよく噛んでまた飲み込むという行為です。

一般的には食べたものを吐き戻すことはありません。胃が一つしか無い動物にとっては、吐き戻すこと大変な事で、滅多に吐き戻すことはあり得ません。吐き戻すときは「嘔吐」といわれ、食中毒の時や腐廃物等を間違って食べてしまった時に、身体が拒否反応として起こる現象です。人間の場合は飲み過ぎで嘔吐という事もありますね。

反芻動物の最大の特徹は、四つの胃(第一胃、第二胃、第三胃、第四胃)を持つことです。

f:id:sinmaisinia:20210405102514j:plainf:id:sinmaisinia:20210405102524j:plain

反芻動物は、通常立った状態で牧草等の餌を食べ、横臥(座った状態)で反芻(噛み返し)を繰り返します。食べた牧草は、最初に第一胃に入り、次に第二胃にいってから口の中へ戻ります。ここで良く咀嚼されてから流動物となって再び飲み込まれます。

再度飲み込まれた流動物は、食道口反射という反射が起こって、第一胃ではなく、第三胃へと流れ込みます。第三胃で水分が減ってから第四胃へ送られてから腸管へ流れていきます。

反芻動物の第四胃が人間等の単位動物の胃と同じものです。沢山の牛の開腹手術をしていると、時々、第四胃に胃潰瘍があるの見ることがありました。のんびりそうに見える牛も人間同様にストレスを抱えながら生きているのでしょうね。

四つの胃の中でも第一胃はルーメンと呼ばれ、成牛で150~250リットルの膨大な容積をもち、そこには、細菌をはじめとする様々な微生物が多く生息しています。ルーメン内ではこれらの微生物が主役となります。微生物は高等動物にはない繊維質を分解する酵素を持っているのです。

ルーメン内では、牛自身が消化できない繊維質が、彼らの働きによって分解されます。人間や犬の大腸にも細菌などの微生物が存在していますから、食物中の繊維質の5%程度は分解されます。これに対し、ルーメンをもつ牛に至っては、50~80%も分解されると言われています。

ルーメンという大きな発酵タンクを持つことによって、人間がうまく利用できない繊維質や質の低いタンパク質を含む草を食べて、肉や乳に変換する反芻動物は人間にとってかなり有益な動物である と言えます。ルーメン内で牧草の繊維質は揮発性脂肪酸(VFA)とメタンガスに分解されます。この揮発性脂肪酸が牛の栄養源となるのですが、同時に発生するメタンガスはゲップや糞便と共に外気へ放出されるので、地球温暖化の原因のひとつにされてしまっているようですね。

残念ですね。

f:id:sinmaisinia:20210405111309j:plain      f:id:sinmaisinia:20210405111322j:plain

 

牛乳はたくさん出るの?

本来は、自分の子牛を育てるために出している牛乳ですが、現在の日本で飼われている搾乳のための牛、その代表的なホルスタイン種(日本の乳牛の99%)ではどれくらいの量の牛乳(これを泌乳量と言います)を出しているのでしょう。

排泄量は採食量によって変化しますが、搾乳牛の場合1日当たり45~50kgの糞と15kgの尿を排泄します。 排泄 された糞を発酵させたものを堆肥といい、肥料として牧草地等に散布されます。

私が就職した約40年前は乳牛の年間に出る乳量は、5,000kgでした。それが改良が重ねられてきた結果として1年間に約9,000kgもの量が出るようになりました。

f:id:sinmaisinia:20210102102330p:plain

     (農林水産省「畜産統計」他 のデータ)

 

乳牛の泌乳量は、分娩直後は1日当たり20kgほどですが、分娩後およそ2カ月で最も多くなり、30~50kg、中には60kg以上になる乳牛もいます。現在飼われている乳牛は、人間が利用するために泌乳量が増えるよう改良されており、1乳期に9,000kgほどの牛乳を出します。1日当たり70kg、1乳期で20,000kgを超える生乳を出す牛もいて「スーパーカウ」と呼ばれます。

 

では、子牛を育てるのにはどれくらいの牛乳の量が必要なのでしょうか。

ある報告によると、和牛では子牛をお産してから6ヶ月間に486kg出たと報告されています。一日量に換算すると3kg弱になりますが、体重がホルスタイン子牛の半分くらいしかない和牛には適当な乳量と言えると思います。

f:id:sinmaisinia:20210102113505j:plain

和牛の場合は、通常生まれた子牛は母牛と一緒に生活し六ヶ月間育ちます。その後、哺乳を止めて乾草等の餌を食べるようになっていきます。

この数字を単純に一年分に換算してみると、多めに見積もっても1年間に1,000kgにしかなりません。つまり、現在牛乳を搾るために飼われている母牛たちは、1年間に生理的に必要な量の約9倍もの乳量を搾られていることになります。そのために、牛本来の食べ物である牧草だけではなく、配合飼料等の穀類まで食べさせられているのが現状です。この本来の食べ物ではない穀類を沢山食べさせられて色々な病気になってしまいます。

f:id:sinmaisinia:20210102113334p:plainf:id:sinmaisinia:20210102113357j:plain

人の場合の乳腺炎と同じ乳房炎や、不妊症と同じ繁殖障害などが多発します。

乳房炎は4本ある乳頭のうちどれかが細菌感染の炎症をおこし、全身に熱が出たりその乳頭から牛乳が出なくなってしまう事もあります。

繁殖障害は、次のお産のために妊娠しようとしても妊娠できない状況が続いてしまいます。

いくら家畜として飼われているとはいえ、かわいそうですね。

 

 

 

 



美味しい牛乳

この頃、牛乳は私たちの生活の中でどのような役割を果たしているのでしょうか。

私たちが小学校や中学校へ通っていた昭和の時代は、まだまだ家庭の食事でも子供の成長に必要な栄養分を十分に取ることができないため、学校給食の中で栄養分補助食品としての牛乳は大いに役立っていたと言えます。

f:id:sinmaisinia:20210313112240j:plain

しかし、飽食の時代といわれるようになって久しい現代は、牛乳の役割そのものもかなり変化してしまったと言えるでしょう。価格的にもかなり安く、色々な清涼飲料水よりは安く、時には水よりも安いことがあります。

f:id:sinmaisinia:20210313112401j:plainf:id:sinmaisinia:20210313112413p:plain

飲用として販売されている牛乳は、牛から搾乳されて出荷された生乳を、殺菌して無調整のままパック詰めして販売しているものです。

代表的な牛乳の成分としては次のような表示があります。

f:id:sinmaisinia:20210313113215g:plain

f:id:sinmaisinia:20210313113232g:plain

牛乳はカルシュウムの補給に役立つという認識が一般的ではありますが、豊富なミネラルの他にもビタミンが含まれており栄養補給にはもってこいの飲料と言えるのではないでしょうか。

f:id:sinmaisinia:20210313113824p:plain

牛乳の水以外の部分は乳固形分といい、乳固形分は乳脂肪分と無脂乳固形分に別れます。従来、脂肪分は注目されており、母牛を改良する場合も主に乳脂肪分と乳量に注目して改良が行われてきましたが、近年は無脂固形分に着目した改良が行われるようになっています。

牛乳が好んで飲まれないようになってしまったのは、栄養があってもその食味が今の時代の人々には受け入れられなのでは無いでしょうか。

f:id:sinmaisinia:20210313115004j:plain

色々な乳業会社が、牛乳を生産していますが、生乳をそのまま出荷する事はできず、殺菌することが法律で義務付けられています。

上の図に見られるようにその牛乳がどのような方法で殺菌されたかが表示されるされています。この牛乳の場合は、120度で2秒間で殺菌しています。

この法律で義務付けられている殺菌は、最善を尽くして雑菌が混入しないように搾乳作業を実施し工場へ出荷しても僅かに生菌が混入してしまっていることがあるので、この菌を牛乳の製品の中に残したまま消費者へ出荷してしまうと、爆発的にこの生菌が増殖し、牛乳を腐敗させてしまいます。

しかし、この高温の殺菌方法が牛乳本来の美味しい味と風味を失わせてしまう原因となっていると思います。折角、生産者が美味しい生乳を搾るために、牛の餌を収穫するための土地改良や、健康管理に気を配っていても製品になる最後に殺菌により風味が失われてしまうのは残念なことです。私は職業柄、搾乳現場で搾乳されたそのままの生乳を飲んだことがありますが、今まで味わった経験のない素晴らしい風味と味でした。

このような牛乳を消費者に提供することできれば、食卓に上がる機会もまだまだ多くなっていくのではないでしょうか。

現在、販売されている牛乳の中で、少しその風味を保ったまま販売されているものがあり、それが低温殺菌牛乳です。

f:id:sinmaisinia:20210313150349j:plainf:id:sinmaisinia:20210313150356j:plain

低温殺菌牛乳とは先程の高温殺菌ではなく、上の表示に見えるように、60度30分、78度20分等の低温で殺菌され販売された牛乳です。

この写真は北海道の地方生産の牛乳ですが、サツラク乳業や小林牧場の低温殺菌牛乳も美味しいですよ。

牛乳の搾り方

搾乳体験として手搾りを観光牧場で体験されたことがある人もおられるでしょう。

f:id:sinmaisinia:20210103154400j:plain

搾乳の始まりは手搾りでした。

酪農の最初の頃は、一軒の農家に1頭か2頭の乳牛を飼育し、手搾りで搾乳し、その糞便は堆肥として発酵させ、畑の栄養として利用するところから始まりました。

f:id:sinmaisinia:20210103154512j:plain

北海道を例にとれば、明治の開拓時代にエドウィン・ダンなどの指導により酪農が取り入れられ、開拓農家に1、2頭の乳牛が導入されるようになっていきました。

昔の乳牛は、現在と違って品種改良されていないので乳量少なく、世間も冷蔵保存機能などの低さにより牛乳の需要も低い状況でもあったので、手搾りでも十分に間に合ったのです。1960年頃まで手搾りが主流であり、ミルカーが本格的に利用され様になったのは1970年以降です。

 

ミルカーの種類は2つに分けられ、「バケツ(バケット)型」と「パイプライン型」があり、機械搾乳の始まりは、バケット型だけで搾乳が行われていました。

f:id:sinmaisinia:20210103155720j:plain     f:id:sinmaisinia:20210103155744j:plain

バケットミルカーで搾乳していた時代は、搾乳した牛乳(約20kgから30kg)を人力でバルククーラー(搾乳した牛乳を冷却して貯蔵しておくもの)の中へ入れなければならなく、酪農家の重労働の一つでした。

 

f:id:sinmaisinia:20210103160525j:plainバルククーラー 

f:id:sinmaisinia:20210103160458j:plain

クーラーの中は自動的に撹拌されています。

 乳牛から搾り出したお乳を直接牛乳処理室までパイプで送乳する方式のパイプラインミルカーが開発され、運ぶ手間がはぶけるため、中・大規 模の経営で使用されています。

f:id:sinmaisinia:20210103161118j:plainf:id:sinmaisinia:20210103161512j:plain

                カウシェイド用パイプラ インミルカー

現在、バケツ型は仔牛用の給与牛乳、乳房炎および治療中の出荷不可能牛乳の搾乳に利用し、パイプライン型は、牛舎内にミルク通路パイプ・ミルカー真空パイプが設置されており、その2つのパイプラインを利用して、出荷用牛乳の搾乳を行います。

パイプラインミルカーには、牛舎内で使用するカウシェイド用パイプラ インミルカーと専用搾乳室で使用するミルキングパーラー用パイプライン ミルカーの 2 種類があります。

f:id:sinmaisinia:20210103161826j:plainミルキングパーラー用パイプライン ミルカー

 

カウシェイド用パイプラインミルカーは小規模、中規模酪農家で、ミルキングパーラー用ミルカーは大規模酪農家で採用されています。

ミルカーの装着の時にカウシェイド用は中腰にならなければならず腰に負担がかかりますが、ミルキングパーラー用は起立したまま装着できるので腰に負担がかかりません。そのため、多少費用がかかっても、腰に自信がなく、経済的に余裕のある酪農家は100頭以下でもミルキングパーラーを利用している酪農家もいます。

現在に至っては「搾乳ロボット」も登場し、米国等の海外や北海道の酪農家さんの間で普及しつつあります。搾乳ロボットとは、各々の乳牛のデータを読み取り、乳量・乳房の形を読み取り、全自動で搾乳を行ってくれるという、農家にとっては夢のような機械で、値段もそれだけ高値でした。しかし、最近では国のクラスター事業(かなり高い補助率)で多くの農家が取り入れ始めています。

牛の出産

牛のお産はどのように行われるのか。ここで説明していきたいと思います。

牛は分娩予定日が近づいてくると、乳房が張ったり、尾の付け根が窪んだり分娩兆候が見え始めます。

f:id:sinmaisinia:20210131112132j:plain

f:id:sinmaisinia:20210131102541j:plain

 

写真のように分娩に先立って骨盤の靱帯が弛緩するために、尾の付け根(尾根部)が陥没します。

 

分娩が始まると、尾を上げて、立ったり座ったり落ち着きのない様子に陥ります。

次に陣痛が強くなってきて、一定の間隔で陣痛がきます。この間隔と強さがまだ弱い時は立った状態のままですが、時間が経過し陣痛が強くなってくると、母牛は寝転んで陣痛が来る度に苦しそうな鳴き声を出します。

f:id:sinmaisinia:20210131103805j:plain

母牛の陣痛がより一層強くなり胎子が産道内へ進んでくると、写真のような胎子を覆う一番外側の袋(尿膜)が破れ、水のようなさらっとした液体が出てきます。この液体は胎児の尿が一旦溜まっているといわれています。これが一次破水ですが、これは外で破れる前に膣の中(産道の途中)で破水してしまう場合も多いようです。

個体差はありますが、尾の挙上が見られてから一次破水までに平均3〜6時間くらいかかります。

一次破水が終わると、30分から2時間くらいで胎児と羊水の入った二次の胎胞が陣痛と共に出てきます。

f:id:sinmaisinia:20210131112701j:plain

 

f:id:sinmaisinia:20210131112611j:plain

この状態で陣痛が続きニ次破水が起きます。ニ次破水と共に出て来る液体は、胎児が陣痛で押し出されやすい様に、ドロドロした半透明の液体(羊水)です。

陣痛と共に胎児が押し出され、前肢に続いて頭が出てきます。

f:id:sinmaisinia:20210131114127j:plain

ここまでくれば、後は陣痛と共に出生します。

f:id:sinmaisinia:20210131114226j:plain

このような経過でお産しますが、母牛のお腹の中で次のような状態でいます。

f:id:sinmaisinia:20210131114603j:plain

普通はこの模式図のような体勢で陣痛を待っていますが、難産も色々発生します。

前肢が出ないで顔だけが先に出てしまう場合、後肢から出てくる場合、お尻から出て来る場合など色々な難産があり、その時は依頼を受けて獣医師が往診します。

正常なお産は農家の人たちで処理されていきます。