牛の乳房炎 原因と症状 

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乳牛の病気には、人間と同様で色々なものがありますが、最も代表的なものが乳房炎です。

人でも赤ちゃんに授乳の期間に、乳房の腫れや痛み、発熱を伴った状態になる場合があります。これが乳腺炎といわれています。

乳牛で同じ症状が出た場合が乳房炎です。酪農現場においてこの病気が発生し問題としてなっているのは、昭和の初めにミルカーによる機械搾乳が始まって以来、技術の進歩と共にミルカーも格段の性能の進歩がありますが、今だにこの病気は無くなりません。

他の職種で同じ一つの問題点を解決できないまま何十年も経過している分野はないと思います。でも、酪農分野における乳房炎は永遠の課題の様に感じられる問題です。やはり、乳牛は機械ではなく動物であることを考えれば当然のことかも知れません。だから、酪農は難しい職業です。

1、症状から分類

大きく 分けて「臨床型乳房炎」と「潜在型乳房炎」に分類されます。臨床型乳房炎とは肉眼的に乳房の異常を伴うもので、乳房が急に赤く腫れ上がったり痛がる場合(急性乳房炎)と、これらに加えて起立困難、脈および呼吸数の増加といった全身症状を伴う場合(甚急性乳房炎)があります。

臨床型乳房炎は牛乳や牛自体に肉眼的に認知できる症状が現れるので、すぐ治療になりその牛乳が出荷されることはありません。

でも、潜在性の乳房炎の場合、全身の症状が出ていないために細菌を含んだ牛乳が出荷されてしまう可能性はあります。消費者としてはこの点が気になりますが、製品にするときに高温殺菌しているので安心です。

 

2、感染経路から分類

乳房炎を感染経路から考えると、「伝染性乳房炎」と「環境性乳房炎」に分類されます。伝染性乳房炎とは、搾乳者の手指や搾乳器具を介して牛から牛へ伝搬する乳房炎です。主な菌種として、黄色ブドウ球菌や無乳性連鎖球菌があります。特に、黄色ブドウ球菌は日本でも広く分離(検出)される菌種です。乳房内に膿瘍(ピンポン玉から野球ボールぐらいのこぶ)を作り、多くの場合菌はこの中に潜みます。抗生物質で治療を行っても膿瘍の内部には薬が到達しないため、黄色ブドウ球菌の排除技術の構築は獣医学的にも大きな課題として位置付けられています。この菌は人の場合、食中毒の原因菌としても知られていますが、搾乳者は搾乳手袋の装着、一頭ごとの乳頭清拭など衛生的な搾乳を行っています。

環境性乳房炎は環境中(特にベッドなど)の菌が乳頭口(乳頭の入口)から侵入し、乳腺に定着することで発症に至るものです。菌の種類として大腸菌やクレブジエラ、さらに緑膿菌などがあります。環境の適切な管理が環境性乳房炎の制圧において重要であると同時に、通常は乳頭の入口にケラチン層という細菌の進入を防ぐ感染防御率の層がありますが、この感染防御能力が減退して細菌が侵入してしまう様です。これらの環境性の菌は徹底した衛生管理でも完全に防御は不可能です。特に大腸菌は通常の糞便の中に存在します。牛がこれらの菌に感染してしまう時は、「日和見感染」といって牛は体調的に弱った時に感染が成立するものといわれています。だから、乳牛はいつもストレスなく飼うことが必要なので、乳牛が気持ちよく生活できる様に農家の方は最大限努力しています。

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