人種差別とブラック企業という呼び方

アメリカでは黒人男性が警察官に拘束されたことにより死亡した事件をきっかけに、人種差別問題が取り上げられ、各地でデモが拡大しています。最近は沈静に向かっていましたが、昨日も何万人規模のデモが行われたところがあり、政府はこれに対し迷彩服を着た警備隊を投入、連日デモ隊に向け催涙弾などを発砲し、これをなんとか封じ込めようとしております。アメリカでは白人と黒人、ブラックとホワイトという人種差別に根強いものがあり、特に現在の大統領トランプ氏は、白人至上主義を掲げ政治を行おうとしております。それに対する抵抗という面でも今のデモが拡大していっているのではないでしょうか。

日本においては黒人や白人の外国人があまり多くないということもあって、あまり人種差別的なイメージはありません。特にブラックという言葉は日本では歴史的に「腹黒い」などの言葉のようにマイナスイメージがあるのかもしれません。

そのため、日本で代表的な言葉としては「ブラック企業」という言葉が一般的に使われています。アメリカではブラックという言葉のイメージを悪くしないように変えていこうという動きがあり、公民権運動のなかで、「ブラック イズ ビューティフル」という言葉が叫ばれ、黒を悪く著す造語ができないように配慮されています。でも日本では日本人以外は日本語を介さないというような感覚で、黒を悪いイメージで使うようになったのではないかと思います。

「ブラック企業」という言葉が使われるようになったのは2000年代後半で、ブラック研修、ブラックバイトなどブラックだけで悪さを表す形容詞として使われるようになり、13年には新語流行語大賞のトップ10に選ばれてしまいました。「ブラック」という言葉は問題解消に向けた機運や働き手の権利意識を高める役割も果たし、メディアでも積極的に使われました。例えば朝日新聞では13年から今年7月下旬までに700回近く掲載していますし、また広辞苑にも18年の第7版に収録されています。黒人差別的な社会的政治的文脈はないものとして日本では使われてはいますが、ブラック、黒に悪いレッテルを貼る事は使う側の意思にかかわらず差別を拡大しかねず、やめた方が良いという意見あります。「ブラック企業」ではなく「問題企業」と表現するようなことではだめなのかという意見も出ています。日本は先ほど述べたように「腹黒い」などの言葉があり、黒には悪いイメージもありますが、日本で生まれ育ったり、働いている黒人も増えている中、無神経な和製英語を見直すべきであるという意見がたくさん出ています。

日本人は歴史的に単一民族的感覚が抜けきらず、中国人もアメリカ人もヨーロッパ人も全てまとめて「外人」と一括りにしてしまう感覚がそもそも間違っているのかも知れません。