胃下垂と似ている病気 第四胃変位

f:id:sinmaisinia:20211008124832p:plain

胃下垂(いかすい)とは、胃が正常な位置よりも垂れ下がっている状態をいいます。 重症になると、骨盤の位置まで胃が落ち込むこともあるとされる疾患です。 さまざまな腹部症状を訴える方がいる一方、無症状の場合もあり、特有の症状がないことなどから、西洋医学では病気として扱われない場合も多くあります。胃のバリウム検査で確認して、胃が骨盤よりも下がっていると、胃下垂の状態です。
胃アトニーは、胃下垂が原因で胃の筋肉がたるみ、胃の動きが悪くなることです。

胃下垂に胃炎や胃アトニーなどが加わると、胃もたれや膨満感などの不快な症状を起こしやすくなります。

  • 胃下垂だけの場合には、自覚症状はほとんどありませんが、胃アトニーになると、消化不良による胃もたれや胃痛、ゲップなどがみられるようです。
  • 一般的に、体つきの細い女性に多いのも特徴です。
    また、甲状腺機能亢進症や脳下垂体不全などホルモンの病気や、お腹の手術、出産のくり返しにより起こることもあります。
  • f:id:sinmaisinia:20211008100830g:plain

  • さて、牛にもこれと似たような病気があります。
  • 牛が持っている四つの胃のうち、人間の胃と同じ役割を果たしている第四胃が、弛緩(アトニー)して、収縮力が低下し胃内にガスが貯留、ガスが貯留するため第四胃が風船の様に膨らみます。そのために本来のあるべき下腹の位置から、上方へ移動してしまいます。
  • この病気を第四胃変位と言います。左の腹壁に沿って上がってきた場合を第四胃左方変位、右の腹壁に沿って上がってきた場合を第四胃右方変位と言います。
  • f:id:sinmaisinia:20211008112401j:plain          f:id:sinmaisinia:20211008112411j:plain

     

                                

    例えば、左方変位の場合は、左の図のように第四胃は通常は下腹に位置していますが、変位になると、右の図のように左腹壁に沿って風船が上がるように変位します。            


    左方変位の場合は胃へのダメージが少ないので手術の緊急性は少ないのですが、右方変位の場合は胃が捻れてしまうことが多く、その場合には出来るだけ早く手術をする必要があります。特に分娩後には胎子、羊水や胎盤の入っていた子宮の容積が無くなるのでお腹の中にスペースが出来易く、食欲が戻らない場合には四胃変位が発生し易くなります。しかし、四胃変位の発生原因には様々な説があり、単純に一つの原因でおこる訳では無いようです。

  • 治療法はほぼ100%外科手術です。第四胃に貯留したガスを抜いてから正常な位置に縫合します。今から40年近く以前、この病気が出始めた頃は外科手術ではなく、注射や投薬といった内科療法や、牛を転がして貯留したガスを抜く方法(ローリング)等が盛んに行われていましたが、再発が多いことから試行錯誤の末、外科手術の方向へ落ち着きました。
  • 外科手術は、立ったまま局所麻酔で右膁部切開を実施する方法と寝かして下腹部を切開する方法があります。どちらも1時間程度で終了します。私の診療所では起立のまま実施しています。
  •