牛乳はたくさん出るの?

本来は、自分の子牛を育てるために出している牛乳ですが、現在の日本で飼われている搾乳のための牛、その代表的なホルスタイン種(日本の乳牛の99%)ではどれくらいの量の牛乳(これを泌乳量と言います)を出しているのでしょう。

排泄量は採食量によって変化しますが、搾乳牛の場合1日当たり45~50kgの糞と15kgの尿を排泄します。 排泄 された糞を発酵させたものを堆肥といい、肥料として牧草地等に散布されます。

私が就職した約40年前は乳牛の年間に出る乳量は、5,000kgでした。それが改良が重ねられてきた結果として1年間に約9,000kgもの量が出るようになりました。

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     (農林水産省「畜産統計」他 のデータ)

 

乳牛の泌乳量は、分娩直後は1日当たり20kgほどですが、分娩後およそ2カ月で最も多くなり、30~50kg、中には60kg以上になる乳牛もいます。現在飼われている乳牛は、人間が利用するために泌乳量が増えるよう改良されており、1乳期に9,000kgほどの牛乳を出します。1日当たり70kg、1乳期で20,000kgを超える生乳を出す牛もいて「スーパーカウ」と呼ばれます。

 

では、子牛を育てるのにはどれくらいの牛乳の量が必要なのでしょうか。

ある報告によると、和牛では子牛をお産してから6ヶ月間に486kg出たと報告されています。一日量に換算すると3kg弱になりますが、体重がホルスタイン子牛の半分くらいしかない和牛には適当な乳量と言えると思います。

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和牛の場合は、通常生まれた子牛は母牛と一緒に生活し六ヶ月間育ちます。その後、哺乳を止めて乾草等の餌を食べるようになっていきます。

この数字を単純に一年分に換算してみると、多めに見積もっても1年間に1,000kgにしかなりません。つまり、現在牛乳を搾るために飼われている母牛たちは、1年間に生理的に必要な量の約9倍もの乳量を搾られていることになります。そのために、牛本来の食べ物である牧草だけではなく、配合飼料等の穀類まで食べさせられているのが現状です。この本来の食べ物ではない穀類を沢山食べさせられて色々な病気になってしまいます。

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人の場合の乳腺炎と同じ乳房炎や、不妊症と同じ繁殖障害などが多発します。

乳房炎は4本ある乳頭のうちどれかが細菌感染の炎症をおこし、全身に熱が出たりその乳頭から牛乳が出なくなってしまう事もあります。

繁殖障害は、次のお産のために妊娠しようとしても妊娠できない状況が続いてしまいます。

いくら家畜として飼われているとはいえ、かわいそうですね。